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釧路地方裁判所 昭和46年(わ)130号 判決 1972年1月28日

主文

被告人冨樫を懲役一〇月に、同飛弾、同矢後を各懲役八月に処する。

被告人らより金三、三八二万四、七一二円を各追徴する。

理由

(罪となるべき事実)

第一、被告人三名は、久保田金一ほか約二十名の者と共謀のうえ、農林大臣の許可を受けないで、昭和四五年七月一五日ころから同年八月二五日ころまでの間、北緯五二度、東経一五五度ないし一五六度付近の海域を主漁場とし、同海域およびその周辺におよぶオホーツク海域(公海上)において、動力漁船第三二住吉丸(総トン数二五二・四八トン)により、流し網を使用してさけ・ます四九、五一五尾を採捕し、もつて指定漁業である中型さけ・ます流し網漁業を営んだ

第二、被告人冨樫は、久保田金蔵ら十一、二名のものと共謀のうえ、農林大臣の許可を受けないで、昭和四五年七月一八日ころから同年八月五日ころまでの間、北緯五一度から五二度、東経一五五度から一五六度付近のオホーツク海域において、動力漁船第一一恒盛丸(総トン数四九・五八トン)により、流し網を使用してさけ・ます約五、五〇〇尾を採捕し、もつて指定漁業である中型さけ・ます流し網漁業を営んだ

ものである。

(証拠の標目)(省略)

(適条)

被告人冨樫の判示第一、第二の所為(包括して一罪と認める)、被告人飛弾、同矢後の判示第一の所為は、漁業法第一三八条第四号、第五二条第一項、漁業法第五二条第一項の指定漁業を定める政令第一項第一三号、刑法第六〇条に該当するところ、後記情状を勘案して、所定刑中懲役刑を選択しその刑期範囲内において被告人らを主文第一項のとおりの刑に処し、被告人らの所(共)有にかかる判示第一の漁獲物は他に処分されこれを没収することができないから、漁業法第一四〇条但書を適用してその相当価額金三、三八二万四、七一二円を被告人らから各追徴することとする。

(量刑事由)

被告人らの本件所為は、漁業資源の繁殖保護、漁業調整等の見地から大臣許可漁業とされている中型さけ・ます流し網漁業(漁業法五二条二項参照)を無許可で営んだというに止まらず、右見地から移動漁具によるさけ・ます漁業が国際条約(北西太平洋の公海における漁業に関する日本国とソヴイエト社会主義共和国連邦との間の条約。昭和三七年六月一九日外務省告示第一一一号等参照)によつて禁止され、かつ我国内法上操業区域に指定されていない海域(指定漁業の許可及び取締り等に関する省令。中型さけ・ます流し網漁業、中型さけ・ますはえなわ漁業、母船式さけ・ます漁業につきその許可又は起業の認可をする船舶の総トン数別、操業区域別及び操業期間別の隻数等に係る農林省各告示。昭和四五年中に適用されるものとしては昭和四四年一一月二七日農林省告示第一八一八。一八一九。一八二〇号等参照)においてなしたもので、ことに判示第一の所為は計画的かつ大規模な犯行であり、採捕したさけ・ますの量も約五万尾にのぼるほどであつて、国際条約ならびにわが国法の目的である漁業資源の繁殖保護又は漁業調整を阻害するきわめて悪質なものといわざるをえない。そのうえ、被告人らはいずれも主犯であり、しかも第一の犯行につき犯責隠蔽工作を積極的に行なうなどその情状まことによろしくない。これらの点に照らせば、被告人らの前科前歴の有無、その内容、年令、家庭状況等本件にあらわれた有利な情状を考慮するも、きびしく処断するのが相当であると思料する。

よつて主文のとおり判決する。

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